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B2Bのセグメンテーション|業種×規模×地域で市場を区切る方法

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目次

「年商100億円以上の企業」「IT企業」。ターゲットをこう決めている会社は多いですが、それは市場を1本の物差しで区切っただけです。「年商100億円以上」だけを条件にすると、その条件に合う会社が商圏に何社あるかを数えられません。年商は公的統計で市区町村×業種には割れないからです。「IT企業」も同じで、通信・放送・ソフトウェア・ネットサービスでは、買うものも決裁の構造も違います。

セグメンテーションは、市場をどの物差しで区切るかを決める工程です。物差しを手元のリストや製品の都合で決めると、後段でいくら精緻に市場規模を計算しても意味がありません。数える対象そのものが変わるからです。

この記事は、B2Bマーケティングのセグメンテーションを、定石(ICP、変数の4軸、評価基準6R)から始めて、政府公式のオープンデータ(経済センサス)で実際に市場を区切るところまで通します。STP(セグメンテーション → ターゲティング → ポジショニング)の最初の工程です。各節末尾の「ツールで確かめてみる」で、TAM/SAMダッシュボードを使って同じ数字を確かめられます。

この記事で身につくスキル

  1. ICPを既存顧客の結果から決め、「業種 × 規模 × 地域」の3軸に翻訳できるようになる
  2. 95の業種を「頭数・集積・伸び・カネ」の4つの物差しで比べ、候補を2〜3案に絞れるようになる
  3. 候補をセグメント定義シートに書いて、次の工程(ターゲティング)に渡せるようになる

この記事の結論

  • ICP(理想の顧客企業の条件)は、受注率・単価・継続率の良い既存顧客5〜10社の共通点から決める。付き合いの深さでは決めない
  • セグメンテーション変数は4軸(企業属性・技術・行動・ニーズ)。公的統計で測れるのは企業属性の3つ(業種・規模・地域)なので、測れる軸で区切ってから、残りを重ねる
  • セグメントの評価基準6Rは、統計の指標に置き換えて確かめられる。頭数・集積・伸び・カネの4つの物差しは、6Rを数字にしたもの
  • 区切る順番は、地域 → 規模 → 業種。業種を最初に決めると決め打ちになる
  • 候補は2〜3案まで。1案に決め打ちせず、次の工程で並べて比べる

1. セグメンテーションは「どの物差しで市場を区切るか」を決める工程

セグメンテーションとは、市場を、同じ物差しで測って似た性質を持つ集団(セグメント)に分けることです。STPの最初の工程で、枠組み全体は別のページで扱います([STP分析タグページ:公開時にリンク])。B2Bで大事なのは、顧客が「人」ではなく「企業」、もっと言えば「事業所」である点です。年齢や性別では区切れないので、物差しを企業の属性から選び直します。

2. ICP(理想の顧客像)は、既存顧客の結果から決める

ICP(Ideal Customer Profile)は、理想の顧客企業の条件です。業種・規模・地域といった属性に、使っている技術、抱えている課題、契約後の相性を加えたもので、この記事で区切る3軸はICPのうち統計で数えられる部分にあたります。ペルソナ(買う人・使う人の人物像)とは単位が違い、ICPは企業、ペルソナはその中の人です。

決め方は、机上ではなく既存顧客の結果から逆算します。

  1. 受注率が高く商談期間が短い、単価が高い(または伸びる)、継続率が高くサポートの手間が少ない、紹介が起きる。この数字で上位の顧客を5〜10社選ぶ
  2. 業種・規模・地域・使っている技術・抱えていた課題・買ったきっかけの共通点を抜き出し、条件にする
  3. その条件に合う事業所が市場に何件あるかを統計で数える(次節以降)。1社の個性を条件にすると、他に当てはまる会社がいない
  4. 代表例として1社を「顔」に置く。ペルソナの企業版として社内で通じる

付き合いの深い取引先が、そのまま理想の顧客とは限りません。関係の良さと結果の数字は別で、手厚く対応しているせいで採算が悪い会社や、特殊な要望の会社が混ざります。数字が良く、しかも懇意、が理想です。

3. B2Bのセグメンテーション変数:4つの軸と、統計で測れる3つ

軸例公的統計で測れるか
企業属性(ファーモグラフィック)業種、従業員規模、所在地、売上測れる(業種・規模・地域)
技術使っている広告・計測・MAツール、クラウド利用統計はない。ただし企業ごとに調べられる
行動購買サイクル、発注頻度、稟議の通り方測れない
ニーズ解決したい課題、重視する価値測れない

市場全体を数えられるのは企業属性の3つだけです。技術の軸は統計にはありませんが、各社のWebサイトのトラッキングタグを見れば、使っている広告・計測・MAツールの当たりがつきます。行動とニーズは営業データや調査でしか分かりません。だから、まず測れる3軸で区切って市場規模(事業所数・従業者数)を確定し、その中で技術・行動・ニーズを重ねる。 統計にない軸から始めると、市場全体に何社いるかが最後まで分かりません。

3軸の区切り方は、業種は日本標準産業分類の中分類(95業種。大分類「情報通信業」には通信・放送・新聞・ソフトウェアが全部入る)、規模は事業所の常用雇用者数の区分(企業の従業員数ではない)、地域は市区町村単位で営業が届く範囲。

4. セグメントの評価基準「6R」を、公的統計で確かめる

区切ったセグメントが狙う価値のあるものかどうかは、6Rで判断するのが定石です。もとはコトラーが挙げた「有効なセグメンテーションの5要件」(測定可能・規模がある・到達可能・識別可能・実行可能)で、成長性と競合を足して選ぶ側の基準に組み直したものが6Rです。B2Bでは、統計の指標に置き換えると確かめやすくなります。

6R意味統計で確かめる指標
Rank(優先順位)候補に順位をつけられるか4つの物差しで並べ替えて候補を絞る。最終の順位は次の工程で獲れる件数から決める
Realistic(規模の有効性)商売になる大きさがあるか事業所数・従業者数(頭数)
Reach(到達可能性)営業や広告が届くか商圏と、その地域に市場がどれだけ集まっているか(集積)
Response(測定可能性)大きさと反応を測れるか中分類 × 規模 × 市区町村の表に載っている。反応は受注データで後から
Rate(成長性)市場が伸びているか5時点の事業所数の変化率(伸び)
Rival(競合状況)競合が強すぎないか商圏に本社を置く上場企業の数・売上・販管費率(カネ)

次の節で使う4つの物差しは、Realistic・Reach・Rate・Rival を数字にしたものです。

5. 区切る順番は、地域 → 規模 → 業種

地域と規模はICPから先に決まります。営業が届く範囲と、予算や決裁の構造は、業種が何であれ変わらないからです。業種は「選ぶ変数」で、最初に決めると他の業種と比べる機会がなくなり、製品の都合による決め打ちになります。だから業種は最後に、地域と規模を固定した上で比べて決めます。

ツールで確かめてみる 探索タブで、商圏=東京都(県内すべて)、規模=50人以上にする。業種はまだ決めない。95業種が同じ条件で横に並びます。

6. 業種は4つの物差しで比べる:頭数・集積・伸び・カネ

物差し指標出典分かること
頭数事業所数・従業者数経済センサス基礎調査リストの長さ。Realistic
集積全国カバレッジ=商圏の事業所数 ÷ 全国 × 同一業種 × 同一規模同上+全国集計商圏に市場が集まっているか。Reach
伸び5時点の事業所数の変化率(全規模計)経済センサス5時点拡大か縮小か。Rate
カネ商圏に本社を置く上場企業の売上高合算EDINET有価証券報告書(連結)単価と予算の存在量、競合の強さ。Rival。上場企業だけの数字

東京都 × 50人以上で見ると、4つの物差しで上位に来る業種は別物です。頭数は情報サービス業が2,651件・636,082人(基礎調査)で群を抜く。集積は金融商品取引業 59.7%、広告業 59.2%、インターネット附随サービス業 59.1%と、全国の6割が東京にある業種が並ぶ。伸びは無店舗小売業 +305.6%、補助的金融業 +55.1%(2009→2021・全規模計)で、印刷・同関連業は −41.2%。カネは電気機械器具製造業が105件しかないのに上場売上62.7兆円、通信業が142件で14.2兆円(EDINET連結)。どの物差しを優先するかは売り方で決めます。件数で稼ぐならリストの長さ、大口を少数取るならカネ、先回りするなら伸び。

ツールで確かめてみる 業種ランキングを事業所数順、カバレッジ順、伸び順、上場売上順で並べ替え、毎回上位に入る業種があるか見る。

7. 候補は「規模 × 伸び」で絞り、構成で確かめる

1. 規模 × 伸びのマトリクス。 横軸に伸び、縦軸に頭数を取ると4つの象限に分かれます。右上(大きくて伸びている)が本命、右下(小さいが伸びている)が先行投資、左上(大きいが停滞)は競合が多い市場、左下は外す。ただし伸びだけで選ぶのは危険です。東京都の電気業は2009→2021で +469.0%(基礎調査・全規模計)と突出しますが、2016年の電力小売全面自由化以降の新規参入が多かった影響とみられ、営業先が5倍に増えたわけではありません。伸びは「なぜ伸びたか」を確かめてから使います。

2. 構成の確認。 候補がどの規模帯、どの市区町村に寄っているかを見ます。50〜99人が半分近くならインサイドセールス型、300人以上が2割あるならそこだけABM(アカウント別攻略)で別建て。都心3区に集中しているならテリトリーはそこで足りる。

題材で絞ると、核はインターネット附随サービス業(489件・144,251人。集積59.1%=全国の同じ業種・規模の59.1%が東京都にある)。489件は狙う市場として小さいので、隣の業種を足す。候補は2つです。

  • A案:+広告業(266件・56,337人・集積59.2%)。デジタルマーケの予算を持つ相手を足す
  • B案:+情報サービス業(2,651件・636,082人・集積47.6%、従業者では54.6%)。受託開発・SIerを足す

A案は東京集積が強い小さな市場、B案は半分が東京の外にある大きな市場。どちらが正解かは、ここでは決めません。

ツールで確かめてみる 「魅力度マップ」で4象限を見て、「大きくて伸びている」で絞り、行をクリックして候補に入れ、「ツリーマップ」で規模区分と市区町村の内訳を確かめる。

8. セグメント定義シートに書く

候補が決まったら、1案につき1枚のシートに書きます。仮説を書くのは、後で受注率を見たときに「区切りが悪かったのか、仮説が悪かったのか」を切り分けるためです。仮説の欄には、§2で決めたICPの「抱えていた課題」を書きます。

項目A案B案
地域東京都東京都
業種(中分類)インターネット附随サービス業+広告業インターネット附随サービス業+情報サービス業
規模50人以上(事業所の常用雇用者)同左
仮説(誰が、なぜ買う)広告運用を内製し、デジタルマーケの予算を持つ事業所受託開発の案件管理・工数管理に課題を持つ事業所
頭数(基礎調査)755件・200,588人3,140件・780,333人
集積(事業所)59.1%49.1%
伸び(2009→2021・全規模計)+23.2%+28.1%
営業モデル50〜99人が約45%:インサイドセールス型。300人以上(約2割)はABM同じ構成。件数が4倍なので分業が必要

9. ターゲティングへ渡す

セグメンテーションの出口は、この2〜3案です。ここから先、市場規模を固定して(TAM=全国の同じ業種・規模、SAM=商圏内)、候補を6Rに沿って比べ、重複を除いてリストの実数を出し、獲れる件数(SOM)を試算する工程は、ターゲティングの記事で扱っています([TAM・SAM・SOMの計算方法と実務(B2Bのターゲティング):公開時にリンク])。上のA案・B案は、そのまま同記事の題材につながります。

ツールで確かめてみる 候補カードの「単一表示で開く」で事業所数と従業者数を確かめ、「Aへ保存」「Bへ保存」でA/B比較へ渡す。

10. よくある失敗

  • 大分類のまま市場を数える。届かない相手まで数えることになり、カバレッジも受注率も薄まる
  • 企業と事業所を混同する。統計は事業所単位、リストは企業単位。法人番号で名寄せしてから数える
  • 伸びだけで選ぶ。理由を確かめないと、営業先が増えていない市場を追いかける
  • セグメントを増やしすぎる。3案を超えると比べられない。製品から逆算した決め打ちも同じで、なぜその業種かを説明できない

まとめ:セグメンテーションの手順チェックリスト

  1. ICPを既存顧客の結果から決め、企業属性の3軸(業種・規模・地域)に翻訳した。測れない軸は後で重ねる
  2. 評価基準6Rを、統計の指標に置き換えて確かめた
  3. 地域と規模を先に固定し、業種は最後に比べて決めた
  4. 95業種を頭数・集積・伸び・カネの4つで比べ、物差しごとに上位が違うことを確かめた
  5. 規模×伸びで絞り、構成(規模帯・市区町村)で確かめた
  6. 候補を2〜3案、仮説つきでセグメント定義シートに書き、ターゲティングへ渡した

数字について

政府公式のオープンデータを条件固定で集計した一次情報です(生成日2026年9月5日、推計モデルなし)。統計層=総務省「令和6年経済センサス‐基礎調査」(市区町村 × 産業中分類 × 常用雇用者規模、事業所単位)、時系列=経済センサス5時点(2024年は定義変更のため参考)、カネ=金融庁EDINETの有価証券報告書(連結、本社帰属、上場のみ)。集計はTAM/SAMダッシュボード、元データはe-StatとEDINET。引用時は条件と生成日を添えてください。限界はターゲティングの記事末尾と共通です。

出典:総務省「令和6年経済センサス‐基礎調査」(e-Stat)を加工して作成/総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(e-Stat)を加工して作成/金融庁「EDINET」の有価証券報告書および「EDINETコードリスト」を加工して作成

この記事の執筆者

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大手企業のデータ分析から中小企業DXまで幅広く牽引

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