BtoBのバイヤージャーニー活用術|社内稟議を動かすコンテンツ設計と可視化の仕組み
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ペルソナもバイヤージャーニーも作ったのに、担当者は前向きなまま、商談が社内で止まることがあります。足りないのは、担当者が上長や決裁者に説明するときに使える素材と、その素材がどこまで読まれているかを見る仕組みです。この記事では、社内稟議を動かすコンテンツの設計と、フェーズ別の行動を見えるようにする手順、購買グループでの顧客データの管理を紹介します。
- 担当者が社内報告や稟議にそのまま使える「社内説明素材」の具体例
- 購買グループの役割ごとに、確かめたいことと用意するコンテンツ
- コンテンツをフェーズで分け、読まれ方を見て営業につなぐ4つのステップ
BtoBのバイヤージャーニーは、ペルソナの社内での動きと「社内説明」を意識する
BtoBのバイヤージャーニーでも、主役は最後までペルソナです。ただ、ペルソナは自分だけでは決められません。比較・検討の途中から上長に相談し、情報システムや購買の部署に確認を取り、最後は決裁者の承認を得るために稟議を書きます。ジャーニーには、ペルソナが社内で誰に、何を説明するのかまで書き込みます。経営層向けのコンテンツとは、ペルソナが経営層に見せやすいコンテンツのことです。私自身も、ジャーニーを描かないまま記事や資料を作り続け、あとで整理しようとしたときに、先に描いておけばよかったと感じたことがあります。
決裁者がペルソナの裏にいることはよく知られています。それでも、マーケが決裁者に直接届いている実感を持てている人は、ごく一部です。
マクロミル/ProFuture「2026年 BtoBマーケティング調査」(BtoBマーケティング従事者103名、2026年2月3日〜4日実施)では、決裁権者に直接アプローチできている実感が「十分にある」と答えた人は9.7%でした。
決裁者に届けるには、ペルソナが社内で使う素材に、決裁者が確かめたいことを入れておくのが近道です。
担当者が上長・決裁者を説得するための「社内説明素材」の具体例
社内説明素材は、ペルソナが手を加えずに社内報告や稟議に使える形で渡します。記事やホワイトペーパーの中に、素材をダウンロードできる場所を設けておきます。
| 素材 | 中身 |
|---|---|
| 選定の比較表 | 比べる観点(機能・費用・サポート体制など)と、それぞれへの自社の答え |
| 投資対効果の試算 | 削減できる時間や増える売上の計算式。ペルソナが自社の数字を入れて使える形 |
| 稟議書のサマリー | 課題・導入の理由・選定の理由・リスクと対策を、A4の1枚にまとめたひな形 |
| 確認シート | セキュリティ、動作環境、契約・取引条件など、関係部署が事前に確かめる項目の一覧 |
素材に共通する条件は3つです。1枚で要点がわかること、数字が入っていること、ペルソナが自分の社内資料に利用しやすい形式(Excel・PowerPoint・PDF)であることです。一から作る人手がない場合は、営業が商談ごとに個別に作っている資料を集め、形をそろえるところから始めます。
社内の役割(購買グループ)ごとに、確かめたいことと用意するコンテンツを整理する
購買に関わる人は、役割によって確かめたいことが違います。役割ごとの確かめたいことと、用意するコンテンツは次のとおりです。
| 役割 | 確かめたいこと | 用意するコンテンツ |
|---|---|---|
| 担当者(ペルソナ) | 業務の課題が解けるか、使いやすいか、他社と何が違うか | 比較の記事、デモやサンプル、選定の比較表 |
| 上長・部長 | 費用に見合うか、導入の段取り、現場の運用の負担 | 投資対効果の試算、導入までの流れ、導入事例 |
| 経営層・決裁者 | 事業への影響、投資を回収するまでの期間、他社での実績 | 同業・同規模の導入効果のまとめ、稟議書のサマリー |
| 関係部署(情報システム・法務・購買など) | セキュリティの基準、契約・取引の条件、今の仕組みとの連携 | 確認シート、よくある質問 |
表のどの行が空いているかで、次に作るコンテンツが決まります。担当者向けの記事は多いのに、経営層・決裁者と関係部署の行が空いていることがあります。
4つの役割すべてに、マーケだけで答えを用意するのは難しいものです。試算の前提は営業、技術的な確認は技術部門、契約の条件は法務や営業管理など、答えを持つ部署と分担して作ります。
ジャーニーに沿ってコンテンツを配置し、フェーズ別の行動を見えるようにする4つのステップ
ジャーニーは、コンテンツの管理と数字の見方の軸にすると、作って終わりになりません。次の4つのステップで、運用に落とします。
Step1:記事・資料をフェーズで分ける
今あるコンテンツを、「認知」「比較・検討」「決定(稟議)」の3つのフェーズに分けます。コンテンツの一覧に、フェーズと「ペルソナが社内で見せる相手」の列を足すだけで十分です。分けてみると、認知のフェーズに偏り、決定(稟議)のフェーズが空いていることが見えてくることがあります。新しい企画は、作る前にこの2つの列を埋めてから進めます。
Step2:フェーズごとの閲覧とダウンロードを計測できるようにする
アクセス解析では、ページにフェーズの印を付けて集計します。GA4なら、ページに「コンテンツ グループ」を設定すると、フェーズごとの閲覧の数を見られます(設定にはタグの変更が要ります)。資料のダウンロードは、ダウンロード後に表示するページの閲覧や、フォームの送信で数えます。MAを使っている場合は、名前のわかる見込み客ごとに、どのページを見て、どの資料をダウンロードしたかが記録されます。
計測の仕組みは、作り込みすぎないほうが続きます。管理表と分析のデータを細かくつなぎ込むと、フェーズの分け方を直すたびに、つないだ所まで直す手間がかかるためです。最初は、ページのURLの決まりか、コンテンツの一覧の1列でフェーズがわかれば十分です。
Step3:決定(稟議)フェーズの資料を、どの会社の誰が見ているかを一覧にする
見る数字の中心は、閲覧やダウンロードの総数より、「どの会社の、どの役割の人が、決定(稟議)フェーズの資料を見ているか」です。週に1回見る一覧にしておくと、営業に渡す候補がすぐにわかります。
ただし、アクセス解析だけでは、会社や人まではわかりません。会社や人で見られるのは、フォームで名前がわかった見込み客だけで、MAや顧客の記録から一覧を作ります。アクセス解析の数字は、フェーズの間で閲覧の数が大きく減っている所、つまりボトルネックを探すのに使います。
Step4:稟議向けの資料がダウンロードされたら、営業から社内説明の手伝いとして連絡する
稟議書のサマリーや投資対効果の試算がダウンロードされたら、ペルソナが社内説明の準備を始めたサインです。このタイミングで、営業から連絡します。
連絡の中身は、社内説明の手伝いにします。たとえば、試算に入れる数字の相談、上長への説明に使う補足資料、上長や関係部署も同席する打ち合わせの提案です。ペルソナが社内で答えに詰まりそうな所を先に埋めるほど、稟議は止まりにくくなります。
MAの顧客データの管理は「個人」から「購買グループ(役割)」へ
MAで見込み客を管理する単位は、個人から会社、会社の中の役割へと広がってきました。単位ごとの違いは、次のとおりです。
| 管理の単位 | 見るもの | 足りないこと |
|---|---|---|
| 個人(リード) | 1人ずつの行動と点数 | 同じ会社のほかの人の動きが見えない |
| 会社(ABM) | 狙う会社との接点の合計 | 会社の中で誰が動いているかが見えにくい |
| 会社の中の役割(購買グループ) | 狙う会社の中で、購買に関わる役割ごとの接点 | 役割の情報を集め、更新する手間がかかる |
海外の調査会社やMAの提供会社も、個人単位では狭すぎ、会社単位では広すぎるとして、購買グループで見る考え方を打ち出しています。高度な機能がなくても、考え方は中小企業でも取り入れられます。
具体的には、MAや顧客の管理表に「社内での役割」の項目を1つ足します。選択肢は、担当者、推進者(社内で導入を推す人)、決裁者、関係部署、反対しそうな人などです。役割がわかれば、担当者には比較や使い方の資料、上長や決裁者には試算と導入事例というように、メールや提案資料を出し分けられます。
役割は、フォームで聞いた役職だけでは決まらないことが多くあります。部長が実務を進める担当者のこともあれば、課長が決裁者に近いこともあるためです。営業が商談で聞いた内容をもとに、役割の項目を更新していきます。
同じ会社で、ペルソナ以外の役割の人も資料を見ていたら、社内で回覧されているサインです。この動きは、個人単位の管理では気づけません。営業に知らせる条件の1つにしておきます。
営業とメンバーに、バイヤージャーニーの使い方を説明するときの一文
ジャーニーは、商談の中身を知る営業と、コンテンツを作るメンバーの両方に向けて使います。
- 営業に:「稟議書のサマリーや試算がダウンロードされたら、すぐにお知らせします。お客さまが社内で説明を始めたサインなので、補足資料や同席の打ち合わせを提案してください。商談で聞いた、上長や決裁者の役割も教えてください。」
- メンバーに:「新しい記事や資料は、作る前に、どのフェーズで、ペルソナが社内の誰に見せるものかを決めてください。決定(稟議)のフェーズと、経営層・関係部署に見せる素材が、いま足りていません。」
まとめ
BtoBのバイヤージャーニーは、ペルソナが上長・決裁者・関係部署に説明する動きまで含めて描きます。社内説明素材を役割ごとに用意し、フェーズ別の閲覧とダウンロードを見て、稟議が動き出した会社に営業がすぐ連絡します。顧客データには社内での役割を持たせ、会社の中で誰が動いているかを見ます。
よくある質問
Q1. バイヤージャーニーとカスタマージャーニーは、どう違いますか?
A1. バイヤージャーニーは、買い手が課題に気づいてから購入を決めるまでの流れです。カスタマージャーニーは、購入後の利用や継続、紹介までを含めた顧客との接点の全体を指します。新規の商談をつくる施策を考えるなら、バイヤージャーニーで足ります。
Q2. MAがなくても、フェーズ別の行動は見られますか?
A2. フェーズ別の閲覧の数は、アクセス解析で見られます。どの会社の誰が見ているかは、資料のダウンロードのフォームで集めた情報と、営業の商談の記録を突き合わせて確かめます。件数が増えて手で追えなくなったら、MAの導入を考える時期です。
Q3. 社内説明素材は、どのフェーズから渡しますか?
A3. 比較・検討のフェーズから渡します。比較表は比較・検討の途中で、稟議書のサマリーや確認シートは決定(稟議)のフェーズに入る前に渡しておくと、ペルソナが社内で説明を始めるときに間に合います。
Q4. ABMと購買グループは、どう違いますか?
A4. ABMは、狙う会社を決めて、その会社に向けて施策を集中させる考え方です。購買グループは、その会社の中で購買に関わる人を役割ごとに見る単位です。ABMで狙う会社を決め、購買グループで会社の中の誰に何を届けるかを決める、という組み合わせで使います。
