SWOT分析とクロスSWOTのやり方と例|社内に散らばる材料を集め、RICE・ICEスコアで施策の順番まで決める
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SWOT分析は、4つの枠を埋めるところまでは進んでも、材料が社内に散らばり、部署ごとに見え方も違うため、施策まで届かないことがあります。求められているのは、関係する人を巻き込んで材料を集め、施策の順番まで決めることです。各枠の導き方、クロスSWOTのコツ、RICE・ICEスコアでの優先順位の付け方を、BtoBの例で紹介します。
- SWOTに人を巻き込む頼み方と、材料が隠れている場所
- 強み・弱み・機会・脅威の導き方と、クロスSWOTで施策の一文にするコツ
- RICE・ICEスコアで施策の順番を決め、経営や営業の感覚と食い違ったときの扱い
SWOT分析の難しさは、材料集めと社内の見え方のずれにある

SWOT分析でつまずきやすいのは、材料を持っている人を動かし、それぞれの見え方をそろえるところです。マーケ責任者が1人で書けば早く終わりますが、顧客と接している部署の事実が入らず、施策の根拠になりません。私が見てきた現場でも、SWOTは枠に項目を書き出したところで止まり、施策まで出てくることはほとんどありませんでした。
巻き込むときは、部署ごとに「1つの問い」と15分だけを頼む
「SWOTの会議に出てください」と声をかけても、営業や製造は自分の仕事が先になり、マーケの依頼は後回しになりがちです。頼むのは、その部署が答えやすい問いを1つと、15分の時間にします。
| 頼む相手 | 聞く問い |
|---|---|
| 営業 | 直近で受注した案件の決め手は? 負けた案件で言われたことは? |
| 技術・製造 | 最近、無理を聞いて対応した注文は? |
| 受注窓口・品質保証 | 最近増えた問い合わせや、指摘を受けたことは? |
| 経営 | 今期、いちばん気にしていることは? |
経営は時間を取りにくいので、最初にこの一言をもらい、最後に施策の順番だけを確かめてもらいます。営業には、集めた失注の理由を商談で使える形にまとめて返します。私なら、社歴の長い、肩書のないメンバーにも問いを持っていきます。社歴の浅いリーダーより、現場のことを知っていることがあるからです。
SWOTの材料は、例外対応とやりとりの記録に隠れている
SWOTの材料は、資料にまとまっていないことがほとんどです。値引きの承認、特急の対応、仕様変更の受け入れ、断った引き合い、問い合わせの文面のように、日々の例外対応とやりとりの記録の中にあります。担当者にとっては「いつものこと」なので、こちらから聞かないと出てきません。
強みの見え方は人によって違う。別々に聞くと、ずれの大きさがわかる
「うちの強み」は、部署や立場、中途入社か古参かで見え方が違うことがあります。経営は全社で同じ強みを共有しているつもりでも、営業と製造で挙げる強みが違う、ということも起きます。
ずれを知るには、「お客さまがうちを選ぶ理由は?」という同じ問いを、集まる前に別々に書いてもらいます。集まってから聞くと、立場の強い人の答えにそろいがちです。答えが割れた強みは消さずに、受注した顧客に確かめる項目として残します。全員の答えがそろったときも、顧客から聞いた言葉か、社内で言い慣れた言葉かを見分けます。
SWOTの4つの枠は、枠ごとに見る材料を変えて導く
4つの枠は、それぞれ別の材料から導きます。例は、産業機械向けの部品メーカーが、精密加工部品を設計部門に売る場合の架空の設定です。
| 枠 | 導く問い | 材料の在りか | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 強み | 顧客が他社でなく自社に頼んだ理由は? | 受注時の営業の記録、小ロットや特急など無理を聞いた注文 | 「技術力」「対応力」など、どの会社も言える言葉で止まる |
| 弱み | 顧客が自社を選ばなかった理由は? | 失注の記録、見積もりの辞退、返事が来なくなった案件 | 人手不足など、社内の不満が混ざる |
| 機会 | 顧客の探し方・頼み方で、自社に有利な変化は? | 問い合わせや見積もり依頼の文面、展示会で受けた質問 | 市場規模や業界動向など、大きな話を書く |
| 脅威 | 顧客の探し方・頼み方や競合の動きで、不利な変化は? | 失注先の競合の名前、相見積もりの社数 | 自社では打ち手のない話だけを並べる |
強みは挙がりにくい枠です。社内で「面倒」「割に合わない」と言われている対応ほど、顧客には選ぶ理由になっていることがあります。自社の人には当たり前なので、強みとして意識されないわけです。挙がった強みも実態が伴わないことがあるので、受注した顧客の言葉で裏付けられるものだけを残します。
弱みは出やすい一方、社内の不満と顧客が選ばない理由が混ざりがちです。顧客が口にしていない弱みは、枠の外に置きます。
機会・脅威は、問い合わせや見積もり依頼の文面を1年前のものと並べると見つかります。求められる納期、送られてくる図面の形式、相見積もりの社数の変化に、顧客の買い方の変化が出るからです。
もう1つ、中途入社して間もない人に「入って驚いたこと」を聞く方法もあります。社内で当たり前になった強みや弱みが、外の目で出てきます。
クロスSWOTは、同じ顧客の話どうしを掛け合わせる
クロスSWOTでつまずくのは、掛け合わせても施策の一文にならないときです。多くは、強みと機会が別々の顧客の話になっていることが原因です。
既存顧客の話の強みと、新規の顧客の話の機会を掛け合わせても、誰に届ける施策かが決まりません。項目ごとに「どの顧客の話か」を書いておき、同じ顧客の話どうしで掛け合わせます。
進めやすいのは、機会・脅威から始める順番です。強みから始めると、挙がりにくい強みのところで手が止まりがちです。機会・脅威を1つ選び、「これに使える強みは? 足を引っ張る弱みは?」と探すと、一文が出やすくなります。

| 掛け合わせ | 施策案の一文(例) |
|---|---|
| SO(強み×機会) | Webで部品メーカーを比べている設計担当者に、小ロットの試作の事例を製品ページと案内メールで見せる |
| ST(強み×脅威) | 価格で比べられている商談の見積もりに、試作から量産まで同じ窓口で対応できることを1枚で添える |
| WO(弱み×機会) | Webからの見積もり依頼に、回答までの日数を先に示す仕組みを営業と作る |
| WT(弱み×脅威) | 価格だけで比べる新規の引き合いへの個別フォローをやめ、既存顧客に時間を回す |
4つのマスをすべて埋める必要はありません。WTは、新しい施策の時間を空けるために、やめることを決めるマスです。現場からは言い出しにくいので、責任者が決めます。
クロスSWOTの施策案は、RICE・ICEスコアで順番を決める
クロスSWOTで施策案が並んだところで、作業が止まることがよくあります。施策案が並んだだけでは、どれから始めるかを経営にもメンバーにも説明できません。そこで、施策案に点を付けて順番を決めます。
- RICE=Reach(四半期に届く見込み客の社数)×Impact(3/2/1/0.5/0.25)×Confidence(100/80/50%)÷Effort(社内の工数・時間)
- ICE=Impact×Confidence×Ease(それぞれ1〜10)
どちらを使うかは、届く社数を数えられるかで決めます。配信先の数や商談の件数を数えられるならRICE、新しい施策が多く数がそろわないならICEです。WTのやめることは点数の外に置いて今期から実行し、効いたかを確かめる数字が決まらない案は保留にします。
たとえば、3つの施策案に両方の点を付けると、次のようになります。
| 施策案 | RICE | ICE |
|---|---|---|
| 既存顧客へのメルマガで、新しい材質の加工事例を送る | 10.0(1位) | 315(2位) |
| 製品ページと案内メールで、小ロットの試作の事例を見せる | 2.4(2位) | 210(3位) |
| 価格で比べられている商談の見積もりに、同じ窓口の1枚を添える | 1.2(3位) | 441(1位) |
最後にできあがる一覧には、施策案、根拠(掛け合わせた項目)、見る数字、点数、順位を並べます。根拠の列があると、「なぜこれが先か」を聞かれたときに、SWOTまでさかのぼって説明できます。
点数と感覚が食い違いやすい3つの場面は、扱いを先に決めておく
点数は、順番を決めるための材料です。点数どおりに進まない場面はおおむね決まっているので、扱いを先に決めておきます。
| 場面 | 起きがちなこと | 扱い |
|---|---|---|
| 経営や代理店から施策が持ち込まれる | 点を付けないまま割り込み、順番が入れ替わる | 同じ表に入れて点を付ける。経営が決めた止められない施策は、点数の外に置く |
| 営業の協力が要る | 営業の都合で、マーケの依頼が後回しになる | 営業が動く時間もEffortに入れ、点を付ける場に営業を呼ぶ |
| RICEとICEで順位が離れる | 届く社数は少ないが、商談に直接効く施策がRICEで下になる | いま動いている商談に効く施策なら、先にやる |
経営とメンバーに施策の順番を示すときの一文
順番の付いた一覧は、説明する相手に合わせて一言を添えます。
- 経営に:「今期の施策は、届く社数・効果・確からしさ・工数で点を付けて順番を決めました。持ち込まれた案も同じ基準で並べています。」
- メンバーに:「今期は、この一覧の上から順に進めます。迷ったら、根拠の列でどの強みと機会から出した施策かを確かめてください。」
まとめ
SWOT分析は、部署ごとに1つの問いを頼み、例外対応とやりとりの記録から材料を集めるところから始まります。強みの見え方のずれは消さずに顧客に確かめ、クロスSWOTは同じ顧客の話どうしで掛け合わせます。並んだ施策案はRICE・ICEスコアで順番を付け、根拠とあわせて示してください。
よくある質問
Q1. SWOT分析と3C分析は、どちらを先にやればいいですか?
A1. 3C分析を先にやると、SWOTの材料がそろいます。3C分析で整理した顧客・競合・自社の事実を4つの枠に写し、掛け合わせて施策にする流れです。3C分析をしていない場合は、直近の受注と失注の理由から書き始めても進められます。
Q2. RICEスコアとICEスコアは、どちらを使えばいいですか?
A2. 四半期に届く見込み客の社数を数えられるならRICE、数えられないならICEを使います。迷ったら両方を付け、順位が離れた施策だけを話し合うと、点の付け方のずれが見つかります。
Q3. 優先順位マトリクス(インパクトと労力の4象限)との違いは何ですか?
A3. 4象限は、施策を大まかに分けるのに向いています。ただし、同じ象限に入った施策どうしの順番は決まりません。施策案が多く、上から1列に並べたいときは、RICEかICEで点を付けます。
Q4. ほかの部署の協力が得られないときは、どう進めればいいですか?
A4. 失注の記録や問い合わせの文面など、手元で読める記録から下書きを作り、確かめたい点だけを営業や現場に聞きます。下書きに「合っているか」を答えてもらう形なら、相手の時間を取らずに済みます。
Q5. SWOT分析のテンプレートは、どんな形がいいですか?
A5. 4つの枠、クロスSWOTの4マス、点数の付いた施策案の一覧を、1つのシートにつなげた形がおすすめです。4つの枠だけのテンプレートは、埋めたところで終わりやすいためです。
