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ジョブ理論とN1分析|BtoBの受注の決め手(KBF)を戦略と施策に落とす

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目次

「うちの強みは何か」と経営に聞かれても、受注の決め手を顧客の言葉で答えられないことがあります。求められているのは、どの強みに予算と人を寄せるかを、顧客の事実で示すことです。ジョブ理論とN1分析で受注の決め手(KBF)を取り出し、関係する部門を巻き込んで、戦略と施策の計画に落とす進め方を紹介します。

📌この記事でわかること
  • ジョブ理論とN1分析を使う場面と、経営に示す1枚の形
  • 営業・技術・経営の巻き込み方と、メンバーに任せる範囲
  • 受注の決め手を、訴求・施策・四半期のマイルストーンに落とす方法

分析から施策・予算まで、フレームワークを使う順番は、BtoBマーケティング戦略の立て方|顧客の声からフレームワークを使う順番 で紹介しています。

ジョブ理論とN1分析は、どこに投資するかの根拠になる

受注した顧客に1社ずつ深く話を聞くと、どの強みに予算と人を寄せるかを、顧客の事実で示せます。

N1分析は、1人(1社)の顧客を深く理解し、その顧客が選んだ理由から打ち手を考える方法です。ジョブ理論は、顧客には、ある状況で進めたいこと(ジョブ)があり、それを片付けるために商品やサービスを選ぶ、という考え方です。2つは組み合わせて使います。N1分析で「誰に深く聞くか」を決め、ジョブ理論で「何をどの順で聞くか」を決めます。BtoBに置きかえると、受注した顧客が、どんな状況で、何を進めるために、何と比べて自社を選んだかを聞くことになります。そこから取り出すのが、顧客が選ぶ基準(KBF)です。

社内で話し合って決めた強みは、部署や社歴によって答えが変わります。顧客の言葉で取り出したKBFなら、経営会議で「なぜこの強みに投資するのか」と聞かれても、根拠を示せます。

経営に示すのは、次の1枚です。

項目書くこと
顧客が選ぶ基準と重み受注した顧客の言葉で書いた基準と、何社で出たかによる重み
寄せる強み重みが中以上で、競合より勝っている基準
根拠その基準を挙げた顧客の言葉
減らすこと社内では強みと思っているが、顧客からは出てこない訴求や施策
次に確かめること社内で見方が割れた基準、失注の理由と食い違う基準

私自身も、強みを整理した資料を作って、書いて終わったことがあります。根拠が社内の声だけの資料では、経営は投資先を変える判断ができません。

ジョブ理論とN1分析を使うのは、投資先を決め直す3つの場面

受注インタビューには手間がかかるので、いつやるかを先に決めます。目安は、投資先を決め直す次の3つの場面です。

場面経営に示すもの
期初に、戦略と予算を見直す前来期に予算と人を寄せる強みと、その根拠
値引きや失注が続き、価格以外の理由が見えないとき価格のほかに、顧客が比べている基準
新しい強みや商材を打ち出す前社内の思い込みと、顧客の見方のずれ

社長と営業で強みの答えが違うときや、経営から「うちの強みは」と聞かれたときも、この場面に当たります。

やらなくてよい場面もあります。前に聞いてから、狙う顧客も競合も変わっていなければ、前の結果を使えます。受注が少なく聞く相手がいないときは、商談まで進んだ見込み客や、失注した相手に聞きます。

受注インタビューは4つのステップで回す

インタビューは、1社ずつ深く聞くN1分析の形で、次の4つのステップで短く回します。

ステップやること
1. 聞く相手を選ぶ直近の受注から3〜5社。取引額が大きく、取引が続いている顧客を優先する。1社につき、担当者と上長に聞く
2. きっかけから順に聞く検討が始まったきっかけ、探したこと、比べた相手、社内で決めたときの順に聞く。「なぜ当社に」は最後にする
3. ジョブを1文にする答えを「〇〇な状況で、△△を進めたい」の1文にまとめる。比べた相手には、競合のほか、今の取引先、社内でやる、何もしない、も入れる
4. 基準と重みにするジョブを満たすために顧客が比べた点を、顧客の言葉で基準にする。聞いた社数の半分以上で出た基準を、重み高にする

たとえば、年に12件ほど受注がある会社なら、直近1年の受注から5社を選べば足ります。

決め手を先に聞くと、「価格が合った」「対応がよかった」で話が止まりがちです。その場合は「ほかに、どこと比べましたか」「比べたとき、何が気になりましたか」と続けると、価格の裏にある基準が出てきます。

たとえば、精密加工部品を産業機械メーカーの設計部門に売る部品メーカーなら、ジョブと基準は次のように取り出せます。

  • 設計担当者のジョブ:「試作の日程が詰まっている中で、図面の段階で加工できるかを確かめ、設計の手戻りを減らしたい」→ 基準:図面の段階で加工の相談に乗る、小ロットの試作に応じる
  • 設計の課長のジョブ:「取引先を替えても、品質や納期の問題を起こしたくない」→ 基準:精度・品質が安定している、納期を守る

担当者と上長でジョブが違うときは、両方を残します。誰の基準かによって、施策を届ける相手が変わるためです。

営業・技術・経営は、始める前に巻き込む

インタビューの結果が戦略に使われるかどうかは、始める前に誰を巻き込んだかで決まります。

部門頼むことタイミング
経営「何を決めるための調査か」の問いを出してもらい、結果には判断をもらう始める前と、終わった後
営業顧客への依頼と同席。その場では聞く側に回ってもらう聞く相手を選ぶときから
技術・製造顧客が挙げた強みを、今後も続けられるかを確かめてもらう基準と重みが出た後

現場だけで進めると、結果が小さくまとまり、戦略の見直しに使われにくくなります。経営は時間を取りにくいので、始める前の問いと、終わった後の判断の2回に絞って頼みます。問いが経営から出ていれば、結果を持っていったときに、調査の目的から説明し直さずに済みます。

社内で強みの候補を集めるときは、声をかける相手を肩書だけで選ばないようにします。

😄 私が見てきた現場では、肩書のない社歴の長いメンバーが、社歴の浅いリーダーより、顧客や現場のことを知っていることがありました。社内で強みの候補を集めるときは、肩書より、顧客と接してきた長さで声をかける相手を選ぶと、顧客の言葉と照らし合わせやすくなります。

受注の決め手を、マーケ戦略と施策のマイルストーンに反映する

取り出したKBFは、訴求、施策、四半期ごとのマイルストーンまで落として、はじめて投資の判断に使えます。

部品メーカーの例で、寄せる強みを決めたあとの落とし方は次のとおりです。

決めること部品メーカーの例
寄せる強み図面の段階で加工の相談に乗る(重み中。比べた競合2社より勝っている)
訴求の一文「図面の段階から、加工できるかを一緒に確かめます」
施策設計者向けの加工の事例、技術者が同席する図面の相談会、営業資料への相談の流れの掲載
マイルストーン第1四半期に営業資料とWebサイトへ反映、第2四半期に相談会を開始、第3四半期に相談会からの商談を数える、第4四半期に再び聞いて重みを見直す
減らすこと「創業からの歴史」を前に出した訴求(受注した顧客からは出てこない)

重みが高いのに負けている基準は、守るものとして扱います。例では「見積もりの回答が早い」がそれに当たり、どの競合に、どれだけ負けているかを比べてから、手を打つかを決めます。

マイルストーンが決まったら、施策ごとの額を予算案に落とします。強みに寄せる施策でも、受注への効き目を数字で示せないと、予算は通りにくくなります。

メンバーに任せる所と、責任者が見る所

インタビューと記録はメンバーに任せ、責任者は判断と、経営への説明を持ちます。

作業担当責任者が見るところ
聞く相手を選ぶ責任者―
依頼・日程の調整、聞き取り、記録メンバー(営業が同席)決め手を先に聞いていないか。顧客の言葉のまま書いているか
ジョブの1文と、基準・重みの案メンバー「技術力」「対応力」のような社内の言葉になっていないか
寄せる強みの判断と、経営への説明責任者―
訴求と施策への反映メンバー施策ごとに、どの基準に効くかが書かれているか

とくに大事なのは最後の行です。施策の企画を受け取るときに、「どの基準に効く施策か」を書いてもらいます。

😄 戦略が共有されていないと、メンバーは本人なりに戦略的なつもりで、記事や施策を始めます。私が見てきた現場では、どこが詰まっているかが見えず、始まった施策を強く止めることもできませんでした。企画の段階で「どの基準に効くか」を書いてもらうと、続けるか止めるかを同じ物差しで話せます。

経営陣と営業に説明するときの一文

調査の前後で、そのまま使える一文を用意しておきます。

  • 経営陣に(始める前):「来期の投資先を決めるために、受注した5社に選んだ理由を聞きます。この調査で決めたいことを、先に1つください。」
  • 経営陣に(終わった後):「5社のうち〇社が挙げた『△△』に、来期の予算と人を寄せます。顧客から出てこなかった『□□』の訴求は減らします。」
  • 営業に:「受注した顧客に選んだ理由を聞きたいので、訪問に同席させてください。その場では、聞くことに専念します。」

まとめ

ジョブ理論とN1分析で取り出した受注の決め手は、どの強みに予算と人を寄せるかを、顧客の事実で示す根拠になります。経営の問いを先にもらい、営業と技術を巻き込んで聞いた結果を、訴求・施策・四半期のマイルストーンまで落とします。聞き取りはメンバーに任せ、判断と経営への説明は責任者が持ちます。

よくある質問

Q1. ジョブ理論・N1分析・KBFは、どう違いますか?

A1. N1分析は、1社の顧客を深く聞いて打ち手を考える方法です。ジョブ理論は、その顧客がどんな状況で、何を進めるために選んだかを聞く考え方です。KBFは、そこから取り出した、顧客が選ぶ基準です。基準だけを並べると、社内で思いつく基準に寄りがちなので、ジョブから聞きます。

Q2. 受注インタビューは、何社に聞けば十分ですか?

A2. N1分析は1社から始められ、1社の言葉でも訴求や施策のヒントになります。重みを付けて投資先を決めるなら、3〜5社が目安です。そのうえで、失注の理由と並べて確かめます。

Q3. 担当者と決裁者で、選んだ理由が違うときはどうしますか?

A3. 両方を残し、誰の基準かを書き分けます。担当者の基準は、記事や相談会など直接届ける施策に反映します。上長や決裁者の基準は、担当者が社内の説明に使う資料に反映します。

Q4. 失注した顧客にも、同じように聞くべきですか?

A4. 聞けるなら聞きます。「納期を守る」のように、受注の決め手には出てきにくいものの、なければ選ばれない条件は、失注の理由に出てきやすいためです。受注と失注を並べると、重みの付け方が確かになります。

この記事の執筆者

coconeco
coconecoLead Manager

デジタルマーケティング立ち上げ・運用設計責任者

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