BtoBマーケティング戦略の立て方|顧客の声からフレームワークを使う順番
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マーケティングのフレームワークは数が多く、来期の戦略を一本の流れで説明できないまま、期初を迎えることがあります。必要なのは、フレームワークの知識よりも、施策を判断する軸を顧客の声から作る順番です。
この記事では、戦略がないと現場で何が起きるか、戦略で何が変わるかと、BtoBでフレームワークを使う順番を紹介します。
マーケティング戦略がないと、施策が増え続ける
戦略がない会社でいちばん多いのは、持ち込まれた施策を受けるうちに、施策の数だけが増えていく状態です。
持ち込む人は、それぞれの立場で筋の通ったことを言っています。代理店は新しい広告のメニューを提案し、営業は目の前の商談に効く依頼を持ってきます。経営が、他社で成果の出た施策を勧めることもあります。どれも間違いとは言い切れないので、断る理由が見つかりません。とりあえず始めた施策は誰も止めないまま、来期に持ち越されていきます。
施策を持ち込む人と、マーケに起きることは、次のように整理できます。
| 持ち込む人 | その人が見ているもの | マーケに起きること |
|---|---|---|
| 代理店 | 提案できるメニュー、出稿の継続 | 経営が提案に乗り、成果の見えない広告が続く |
| 営業 | 今月・今期の商談 | 目の前の依頼が優先され、マーケの施策が後回しになる |
| 経営 | 会社の方針、他社の成功例 | 方針は正しくても、施策に落とす基準がなく「うちも」が増える |
経営の方針から施策が決まること自体は、自然な流れです。困るのは、その方針を施策に落とすときの基準が、マーケの側にないこと。基準がなければ、持ち込まれた案を、持ち込まれた順に受けるしかありません。
戦略が決まると、誰に・何を・どこで・いくらで届けるかが一本でつながる
戦略で変わるのは、施策の種類よりも、施策を動かす決めごとの中身です。
BtoBの施策は、記事や資料を作ってメルマガで届け、問い合わせを営業に渡すという型が、どの会社でも似ています。施策の一覧を他社と見比べても差が見えにくいのは、このためです。差が出るのは、狙う顧客、訴求、コンテンツ、チャネル、リードの渡し方、予算が、同じ顧客像でそろっているかどうかです。
戦略がないときとあるときの違いは、次のとおりです。
| 決まるもの | 戦略がないとき | 戦略があるとき |
|---|---|---|
| 狙う顧客 | 「製造業全般」など広く、購買に関わる人も決まっていない | 受注しやすい業種・規模と、担当者・上長・決裁者が決まっている |
| 訴求 | 「高品質」「実績多数」など、どの会社でも言えること | 顧客が選んだ理由を、顧客の言葉で言っている |
| コンテンツ | 検索されるキーワードを順に埋める記事と、毎回同じ記事・資料を紹介するメルマガ | 狙う顧客の検討の段階ごとに、テーマと送る相手を変える |
| チャネル | 勧められた広告やイベントに、順に出る | 狙う顧客がいる場所に絞り、合わないものには出ない |
| リードの基準と渡し方 | 件数で渡し、営業から「質が低い」と言われる | どんなリードを渡すかを、営業と決めている |
| KPIと予算 | 施策ごとの件数を追い、予算は前年の延長 | 受注につながる数字を追い、予算は施策の順番に沿って配る |
このように戦略を施策へ落とし込むには、「誰に届けるのか」を具体的にする必要があります。そこで、ペルソナで顧客像を整理し、バイヤージャーニーで検討の過程を整理します。ただし、どちらも社内の想像だけで作るのではなく、実際の顧客データや声をもとに設計することが重要です。
関連記事:BtoBのバイヤージャーニー活用術|社内稟議を動かすコンテンツ設計と可視化の仕組み
BtoBの営業職の74.0%が、マーケティングとの連携に課題を感じていました。営業側が挙げた課題で最も多かったのは、「マーケティングから連携されるリードの質が低い」(32.6%)でした。渡すリードの基準を戦略で決めていないと、リードの良し悪しは営業の物差しで判断されます。
出典:One Marketing「営業とマーケティングの連携」に関する実態調査(BtoB企業の営業職291名・マーケティング職209名の計500名、2024年11月14日〜17日実施)をもとに作成
フレームワークは、既存顧客のデータと声を聞くところから使う
フレームワークは、既存顧客を受注データで分け、選んだ理由を聞くところから使います。
よくある順番どおり3C分析から始めると、顧客の欄が社内の想像で埋まりがちです。顧客の見え方は部署や社歴によって違い、営業は「価格」、技術は「技術力」、古くからいる社員は「長年の付き合い」と、それぞれの答えを持っています。どれが正しいかは、顧客に聞かないと決まりません。
使う順番と、それぞれで顧客から取り出すことは、次のとおりです。
| 順番 | 使うもの | 取り出すこと |
|---|---|---|
| 1 | RFM分析・ABC分析(受注データ) | 話を聞く相手(取引額が大きく、取引が続いている顧客) |
| 2 | N1分析・ジョブ理論・失注分析 | 顧客が選んだ理由(KBF)と、選ばなかった理由 |
| 3 | 3C分析・戦略キャンバス・VRIO分析 | 顧客が選ぶ基準で見た、競合との差と自社の強み |
| 4 | STP分析・ポジショニングマップ | 狙う顧客と、勝てる位置 |
| 5 | 4P分析 | 訴求の一文と、施策の形 |
| 6 | クロスSWOT・RICE・ICE | 根拠のある施策案と、その順番 |
1でRFM分析を使うときは、顧客数が数十社以上ある場合に適しており、BtoBは取引の回数が少ないため、回数よりも取引額と取引の続いた期間を重く見ます。2では、選んだ1社の担当者と、上長や決裁者にも、選んだ理由を聞きます。1社の話で決めきれないときは、失注した見込み客の理由と並べて確かめます。
2を飛ばすと、3から先が、また社内の声の大きさで決まります。顧客の言葉がそろえば、3から先は、その言葉を物差しにして競合と比べられます。3Cのまとめ方は、3C分析のやり方|顧客・競合・自社からKSFを特定し、施策と予算の優先順位を決める で紹介しています。
5フォース分析やPEST分析は、業界の構造や外部環境の整理には役立ちますが、持ち込まれた施策を判断する材料になりにくいため、この順番には入れていません。
戦略があると、持ち込まれた施策を戦略と数字に照らして判断できる
戦略があれば、持ち込まれた施策に、根拠のある答えを返せます。答えは、やる、順番を入れ替える、条件をつけて試す、やらない、の4つから選べます。
判断のときは、次の3つを順に確かめます。
- 狙う顧客に届くか
- 顧客が選ぶ基準に効くか
- 今の施策と比べて、受注への効き目と、かかる予算・工数で上回るか
3つ目は、施策ごとに受注への貢献を数字で見ていないと答えられません。予算の場でも同じで、売上への貢献やROIを数字で示せないと、予算は通りにくくなります。追う数字の決め方は、KPIの形骸化を解決|行動指標・評価まで一気通貫でマネジメント、予算の配り方は、マーケ予算案の作り方|来期の準備は何から?予算資料の8項目と作る順番 で紹介しています。
判断の軸は、決めた直後に経営と営業に伝えておきます。経営は時間を取りにくいので、始める前に問いを出してもらい、決めた後は確認だけをもらいます。現場だけで決めると小さくまとまりがちなので、営業など顧客と接する部署にも、顧客の声を出してもらいます。
経営会議と営業に、来期のマーケ戦略を説明するときの一文
来期の戦略は、そのまま伝えられる一文にしておきます。
- 経営会議で:「来期は、既存顧客が選んだ理由をもとに〇〇の顧客に絞り、△△の施策はやめます。新しく持ち込まれる施策は、狙う顧客に届くかと、受注への効き目で判断します。」
- 営業に:「受注した顧客に選んだ理由を聞き、その言葉で訴求とリードの基準を決めました。渡すリードの基準は、一緒に見直させてください。」
まとめ
戦略がないと、施策は頼まれた順に増え、狙う顧客のリードや顧客の言葉が積み上がりません。戦略で変わるのは、狙う顧客から予算までをそろえる中身です。フレームワークは既存顧客のデータと声から使い、持ち込まれた施策を戦略と数字で判断できる状態をつくります。
よくある質問
Q1. マーケティング戦略とフレームワークの違いは何ですか?
A1. 戦略は、狙う顧客、訴求、チャネル、予算をそろえ、施策を判断する軸です。フレームワークは、その軸を顧客の事実から作る道具です。埋めた表が施策の判断に使われていなければ、戦略にはなっていません。
Q2. 3C・SWOT・STP・4Pは、どの順で使いますか?
A2. その前に、既存顧客を受注データで分け、選んだ理由を聞きます。そのうえで3Cで競合と自社を比べ、STPで狙う顧客と位置を決め、4Pで施策の形にします。SWOTは、施策案を出して順番を付けるときに使います。
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Q3. 既存顧客が少ない場合や、新規事業の場合はどうしますか?
A3. 取引のある顧客が数社でも、選んだ理由を聞く価値はあります。顧客がまだいない新規事業では、商談まで進んだ見込み客や、失注した相手に聞きます。データで分ける手順は省き、話を聞く相手を選ぶところから始めます。
Q4. 5フォース分析やPEST分析は使わなくてよいですか?
A4. 持ち込まれた施策を判断する材料になるなら使い、ならなければ外します。業界の構造や外部環境を整理できても、狙う顧客や予算が決まらないなら、優先度は下げてかまいません。
Q5. 兼務で時間がないときは、どこから始めればよいですか?
A5. 取引額が大きく、取引が続いている既存顧客を1社選び、選んだ理由を聞くところから始めます。そこで出た言葉を、訴求とリードの基準に反映するだけでも、施策の判断はしやすくなります。
